大多和歯科医院

直撃インタビュー

直撃インタビュー

大塚で三代続く歯科医院だそうですね

ええ、祖父が開業し、父と母が二代目、そして私が三代目です。

子どもの頃、おじい様やご両親の姿をどのように見ていましたか。

インタビュー

住居の下が歯科医院、という環境で育ちました。
日常生活のすぐそばで、祖父や両親が、近所の人たちの歯の治療をしているというのは、自宅兼店舗が当たり前の、下町の八百屋さんや魚屋さんと同じような感覚なのかもしれません。仮に親が大学などの勤務医なら、また別の見方があったのかもしれませんが、両親の働く姿は日常生活の一部になっていましたので、歯科医という仕事を、とくに意識したことはないんです。

歯科医になろう、と決めたのはいつごろなのでしょう。

高校の進路選択で、理系か文系かを選ぶ際、まあ理系が向いているかな、と理系を選び、その後大学受験を考えたときに、医師か歯科医になろう、と思いました。何がなんでも歯科医になって家を継ぐぞ、という強い気持ちはありませんでしたが、生まれ育った環境が歯科医院ですから、それが自然かな、と。迷いや葛藤はなかったですね。

大学卒業後は、すぐに実家に戻られたのですか。

いえ、大学に3年残りました。その傍ら、開業医としての仕事とノウハウを学ぶために、大学のOBがやっていたクリニックで、週に数日働いていました。実家にすぐには戻らなかった理由は、開業医としてのスキルをしっかりと学んでおきたいと思ったからです。というのも、最初から実家に戻ってしまうと、結局は父のやり方をそのまま継承することになってしまう。将来自分が継ぐからには、自分なりのやり方を模索したいですし、いわゆる昔ながらの治療よりも、新しいものを身につけたいですからね。

私が学んだOBのクリニックは、当時でも開業医としては最新の治療を取り入れており、その先輩は、今やインプラントの高い技術を持つ歯科医として知られています。そうした環境で、一通りの最新治療と開業医としてのノウハウを学べたことは、私にとって今につながる貴重な経験になりました。

実家のクリニックで仕事をするようになったのはおいくつのときですか。

30歳くらいですね。父、母、私の3人体制で治療を行いました。基本的に初診の患者様は私が診て、父の古くからの患者様は父が診る、という体制でした。

古くからの患者様も多いそうですね。

はい。何世代にもわたって家族で来てくださる患者様が多いですね。最近は、新しくこちらに越してきた方や、廃業してしまった近隣のクリニックからの患者様も増えてきました。

先生の代になって、大多和歯科医院のここが変わった、という点はありますか。

当然ながら、治療内容は新しいものを取り入れていますから、そこはまず父の代とは違いますね。あとは、患者様の話をよく聞く、といったことでしょうか。父は昔ながらの歯科医なので、ニコニコ笑いながら、患者様と話をするようなタイプではありませんでした。
しかし今はインフォームドコンセントも大事ですし、患者様としっかり話をすることも治療の一部です。昔から通っている患者さんは、「大先生よりもやさしいから、いろいろ話ができるようになった」と感じているかもしれませんよ(笑)。

治療へのこだわりを教えてください。

『大多和歯科医院』は、地域密着型の、町の歯医者です。
特別な治療をしているわけではないですし、最新の医療機器をズラリと揃えている、というわけでもありません。もちろん、審美歯科や予防歯科、インプラントなどもやりますが、基本的には保険適用内の治療がほとんどです。虫歯や入れ歯といった、普通の治療をきちんと、つまり、自分ができる治療をきちんとやることが、こだわりといえばこだわりかもしれません。

地元の患者様に対しては、どのようにお考えですか。

インタビュー

こうして代々ずっと同じ地で開業できているのは、地元の方々から頼りにされている、ということであり、この町で代々開業している以上、その期待を裏切ってはならないと思っています。町医者の役割は、患者様に「いつも同じ先生が診てくれる」、「安心して治療を受けられる」という安心感を与えて差し上げること。だからこそいい加減なことはできません。また私は、医療連携もとても大切だと考えています。すべて自分で抱え込むのではなく、自分の専門外のことに関しては、その道のプロに任せる。難しい親知らずの抜歯などは、設備が整った大きな病院のほうが安心ですし、審美やインプラントも、他に任せたほうがよいと判断したものは、他の先生にお願いします。
ここ豊島区は、医療連携がよくとれており、近隣に大きな病院もたくさんありますから、それをきちんと活用し、よりよい治療、納得のいく治療を提案するのは、歯科医として当然のことだと思っています。無理して何でも自分が抱え込み、結果的にはトラブルになってしまっては元も子もありません。患者様に対しても失礼ですからね。

普通の治療をきちんと、ということが、今は一番求められているかもしれません。

確かにそうかもしれませんね。ただ当院は、代々それを当たり前のことと考えて実践してきましたので、「普通の治療をきちんとやる」ことは、私にとっても特別なことではないのです。
そして、代々続く開業医が、この気持ちをなくしてしまってはダメだと思います。歯科医は医者と同様、患者様に医療を提供する仕事です。お金儲けが目当ての商売とは違います。もちろん、「経営」は大事ですが、その前に「しっかりした医療の提供」があることを忘れてはなりません。

最後に今後の展望をお聞かせください。

特別新しいことをやろうとは考えていません。これまで通り、患者様に安心して通っていただける治療を提供していきたいと思っています。
ただし、歯科の技術は年々進歩していますから、アンテナを広げ、新しい技術も学んで日々の診療に取り入れていかなくてはと考えています。
それからスポーツ歯科分野も、ニーズに応じてやっていきたいですね。当院の近所にはボクシングジムがあって、プロボクサーの方用のマウスピースを私が担当しています。マウスピースのニーズは意外と広く、スポーツだけでなく、脳性まひの方用のものなど、けっこういろいろあるんです。歯科=マウスピースという図式はあまり知られてはいないため、どこに頼めばよいのかわからないという方も多いようですが、これはもともと歯科医の仕事領域。ニーズにはできる限り応えていかなくては、と思っています。